前立腺癌
前立腺癌は男性の癌罹患数では一番多い癌です(2018年統計)。
約92,000人の男性が1年間に前立腺癌と診断されています。しかし死亡数は、ほかの癌の中では7番目です。つまり、罹りやすい癌ですが、なかなか死なない癌とも言えます。50歳ぐらいより発見されることが多くなり、年齢とともに罹患数が増えてきます。大変ゆっくりと進行する癌ですので、早期発見すれば治る癌です。
症状
前立腺癌はあまり症状のない癌です。
進行してくると、血尿や排尿困難が現れることがあります。
また、骨やリンパ節に転移しやすく、骨痛や、リンパ節転移による下肢リンパ浮腫などの症状を示す事があります。
検査
PSA検査
前立腺がん検査の中で最も手軽にできる検査です。基準値は年齢により多少変動がありますが、4ng/ml未満が正常範囲と言われています。PSAは前立腺上皮細胞で作られているもので、前立腺に何らかの刺激があると上昇します。その刺激の一つに前立腺癌があり、そのほかでは前立腺肥大や、前立腺炎でも上がります。PSA値が4-10ng/mlで約20-40%の前立腺癌が発見されます。
直腸診
肛門より指を入れ前立腺を触診します。典型的な前立腺癌は、石のように固く、表面が凸凹しています。
超音波
腫瘍の有無や、前立腺の大きさなどを確認します。
確定診断
上記にて前立腺癌が疑わしい場合行う検査です。
前立腺針生検
超音波で前立腺を観察しながら、細い針で何カ所か前立腺組織を採取し、病理診断をします。ただし、この検査で癌がないから癌を持っていないわけではありません。組織検査は、一部の前立腺組織しか採取していないので、小さな癌などは採取しそこなう場合があるからです。その場合は、定期的にPSA検査を行い、上昇傾向などがあれば再度組織検査を行います。
画像診断
CT/MRI
前立腺がんの転移などを調べます。
骨シンチ
骨転移の有無につき検査します。
治療
前立腺癌の進行度や患者さんの状態で決めていきます。
監視療法
前立腺癌の進行がゆっくりであるため、前立腺針生検で比較的悪性度の低いもので、生命予後にあまり影響のない状態の方を対象とします。定期的なPSA検査と前立腺針生検が必要です。
手術療法
前立腺癌が前立腺にとどまっていて、期待余命が10年以上と判断される場合に前立腺全摘術を行います。
開腹手術
臍下から恥骨上縁まで切開し手術をします。
腹腔鏡下前立腺全摘術
腹部に数カ所の鉗子やカメラを入れる穴をあけ、炭酸ガスで腹部を膨らまし手術する方法です。開腹手術に比べ、出血量が少なく、術後の回復も早いのが特徴です。
ロボット支援前立腺全摘術
手術用ロボットを遠隔操作して腹腔鏡手術をする方法です。
放射線療法
放射線を前立腺に照射して癌を抑制する方法です。
照射方法には外から当てる外照射と、前立腺内から照射する組織内照射があります。
薬物療法
ホルモン療法
前立腺癌は、男性ホルモンの刺激で増殖します。そのため男性ホルモンを抑制する治療が行われます。癌を撲滅する治療ではなく、発育を抑える治療です。手術や放射線治療適応外の方や、放射線治療の前後、転移がある症例、高齢者に使用されます。
去勢抵抗性前立腺癌
ホルモン療法は、長期使用するとだんだん効果がなくなってきます。これを去勢抵抗性前立腺癌といいます。これに対し、エンザルタミドやアビラテロンなどの薬剤を使用します。
化学療法
去勢抵抗性前立腺癌や、転移のある前立腺癌に対し化学療法を行うこともあります。