夜尿症

夜尿症とは

一般的に、人は成長とともに脳や神経、膀胱機能などが発達してきて、尿意が強くなると自然に目覚めるようになってきます。しかし、なかなか尿路制御の回路が発達しない、あるいは膀胱の機能が発達しない場合、5歳を超えても就寝時の尿失禁が起こることがあります。この夜間(就寝時)の少なくとも1か月に1回以上ある状態が3か月続いている尿失禁を夜尿症といいます。
2対1の割合で男児に多く、個人差はありますが、5歳で5~7人に1人程度、就学期の7歳になると10人に1人程度になるとされています。年齢が上がるとともに徐々に減っていき、思春期を迎えるころまでにはほとんどの人で夜尿症がなくなるとされています。
ただし、成人しても完全に夜尿症がなくならない人が1%程度はいます。夜間の尿漏れ、尿失禁でお悩みでしたら当院までご相談ください。

夜尿症の原因

夜尿症の原因としては、夜間(就寝中)の「多尿」、膀胱など排尿器官や周辺筋肉などの「排尿未熟」、それに加えて子どもは一般的に睡眠が深く簡単に目覚めることができないということが大きく関連しています。
就寝中は尿の生産量を少なくする抗利尿ホルモンが働いて、尿量が少なくなり、膀胱や骨盤底筋肉群などが成熟してしっかりと尿を溜めることができ、それでも尿量が増えてきたら尿意で目覚めることができるようになっています。しかし、このサイクルのバランスが崩れることで夜尿(おねしょ)が起きます。
治療にあたっては、どこでバランスが崩れているかを鑑別することが大切になります。

夜間多尿タイプ

就寝中の尿の生産量が多いタイプです。原因としては、抗利尿ホルモンの分泌が不足している、水分や塩分の摂取量が多い、何らかのストレスがあるなどが考えられます。夜尿(おねしょ)の尿量が多いのが特徴です。

排尿未熟タイプ

尿の蓄積と排泄に関する神経回路が未成熟のタイプです。膀胱が未発達で尿を溜めておける量が少ない、尿意を我慢するだけの筋力がないことなどが原因となっています。このタイプでは夜尿だけではなく、昼間のお漏らしや頻尿などもみられるのが特徴です。

混合タイプ

夜間尿量も多く、また排尿回路の未熟さもあるタイプです。

夜尿症の併発しやすい病気

夜間尿量の増加、尿路の未発達、覚醒障害といった夜尿症の原因には、内科的な基礎疾患や神経・心理的疾患が隠れている場合もあります。
腎臓や膀胱などの泌尿器科の病気、内分泌系の病気、耳鼻咽喉科的な睡眠障害、脳神経系の障害、ADHD(注意欠如多動性障害)や強度のストレスなどの精神的・心因的要因などが考えられます。
そのため、夜尿症で来院された場合、こうした基礎疾患が原因となっていないかをしっかりと鑑別して、治療にあたることになります。

喉・鼻と夜尿(おねしょ)

アレルギーやアデノイド肥大などがあり、就寝中にいびきをかく、鼻づまりで口呼吸になっているといった症状があるお子さんの場合、睡眠リズムの崩れや低酸素血症となって血流障害が起こり、夜尿症を生じることがあります。アレルギーや呼吸障害の治療を行うことで、夜尿症が軽減することがあります。
当院でも、基礎疾患の有無を判断し、必要に応じて耳鼻咽喉科での治療をお勧めすることもあります。

発達障害と夜尿症

近年の研究では、発達障害には神経伝達物質の分泌異常が関係しており、脳中枢神経系が未発達になりやすいことがわかってきました。そのため、排尿に関する感覚も発達しにくく、夜尿症を合併しやすいことが指摘されています。特にADHDのあるお子さんは、およそ3人に1人に夜尿症があるという統計がでています。
夜尿症の治療でも、こうした事情を考慮し、発達障害と両面からの治療を行うと効果が高くなることが知られています。

夜尿症の検査

夜尿症が疑われる場合、尿検査や血液検査、腹部超音波検査、最大膀胱量に関する検査を必要に応じて行います。

尿検査

夜尿症が疑われる場合、朝と昼間の尿の濃さや重さを比較します。そのため、尿検査は朝だけでなく日中にもしていただくことになります。

血液検査

尿を生成する腎臓の機能を調べます。血液中のミネラルや血液の濃さなどを中心に、一般的な項目を調べることにより腎臓など身体の状態を測ります。

腹部超音波検査

腎臓から尿路にかけて異常がないか、また膀胱の大きさやふくらみ方を調べます。

最大膀胱量

ギリギリまで尿を我慢した状態でどれくらい尿が出る(排尿)されるか調べます。

夜尿症の治療

排尿機能の発達には個人差があります。しかし、指針としては、就学前、小学校低学年、小学校中学年以上といった年齢層に分けて治療の必要性を考えます。

5~6歳の就学直前

生活習慣の改善だけで通院の必要はないことが多くなっています。ただし、夜尿に伴い昼間に大小便のお漏らしがあるケースでは受診をお勧めしています。

小学校1~2年生

ときどき夜尿がある程度であれば生活習慣の改善で済むことが多くなります。しかし、ほぼ毎日夜尿があるケースでは受診をお勧めします。

小学校3年生以上

夜尿が治らない場合、治療を必要とすることが多くなります。小児の泌尿器を専門とする医師に相談することをお勧めします。小児泌尿器科も専門とする当院までご相談ください。

治療としては、行動療法が中心になります。以下の点を意識した生活を送ることから始めましょう。

  • 夕食後に給水を控える
  • 夕食から就眠まで2時間以上あける
  • 塩分摂取を控える
  • 完全排尿してから寝かせる

など

さらに、蓄尿量を増やすことを目的にした膀胱訓練などを行います。
こうした治療で効果が得られない場合、尿量を減らすことを目的に抗利尿ホルモン薬の服用や、夜尿の出始めで少し下着が濡れたらブザーが鳴る「おねしょアラーム」によるアラーム療法を行います。
これらの治療でも治りにくいケースでは、さらに抗コリン薬の併用などを検討します。
一般的には思春期までにお子さんの夜尿症はなくなりますが、1%前後の方は成人になっても夜尿症が残ることがあります。
小学校就学年齢になっても、ほぼ毎日夜尿がみられるようなお子さんは治りにくいことが多いので、早めに受診して治療を始めることをお勧めしています。

夜尿症治療のポイント

夜尿症を治すには、保護者の方の理解も必要です。その場合のポイントは焦らず、怒らず、起こさずがポイントとなります。

焦らず

夜尿症は、肉体的、精神的な様々な要素が絡み合うことで起こります。そのため、治療を始めてすぐに効果が現れるものではありません。個人差はありますが、治療にはおよそ1年程度はかかるとされています。すぐに効果がでないからといって、焦りは禁物です。

怒らず

保護者の方がおねしょをするたびに怒ってしまうことによって、お子さんはストレスを募らせて、精神的な理由からも治療が遅れる原因なります。逆におねしょをしなかった時に褒めてあげたりご褒美があったりすることによって、治療効果が高まるとされています。

起こさず

就寝中、尿が溜まってもいないのに、無理に起こしてトイレに連れて行かせたくなるかと思います。しかし、これは睡眠が浅くなり生活のリズムが乱れ、逆効果になることがあります。むしろ水分や食事のコントロールをしながら、朝までぐっすりと休むことによって膀胱の蓄尿量も増え、夜尿症が軽快していくことに繋がります。

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