前立腺炎症候群
前立腺炎症候群には米国国立衛生研究所によりカテゴリーⅠ~Ⅳまで分類されています。臨床上よく見られる急性細菌性前立腺炎と慢性非細菌性前立腺炎につき説明します。
急性細菌性前立腺炎
症状
38℃以上の高熱を伴い、排尿時痛、頻尿、会陰部痛、全身倦怠感などを伴います。
原因
約80%は、大腸菌感染によるものです。性活動期の年齢では淋菌、クラミジア等の感染によるものがあります。また高齢者の場合、尿道カテーテル操作や、前立腺生検後に発症することがあります。
検査
診断は、容易に出来る病態です。
- 検尿
尿中白血球の増加(膿尿) - 血液検査
炎症反応高値 - 直腸診
前立腺腫大、圧痛、熱感 - 尿培養
原因菌の特定を行います
治療
早期の抗生剤投与を行います。糖尿病など基礎疾患がある場合、重症化する場合があるため、抗生剤点滴を行います。
前立腺内に膿がたまった場合は、手術にて切開排膿することもあります。
慢性非細菌性前立腺炎
症状のある前立腺炎のカテゴリーの中で、約90%がこの慢性非細菌性前立腺炎です。診断・治療に難渋することが多く、泌尿器科医泣かせの疾患です。
症状
会陰部痛、鼠径部痛などの疼痛症状、頻尿、残尿感などの排尿症状、大腿部、臀部のしびれ感など、臍から下部の様々な非特異的な症状があります。このため、診断困難なこともあります。
検査
- 尿検査
尿路感染、血尿の有無を調べます。 - 直腸診
前立腺を触って圧痛の有無を確認します。
圧痛を伴わない場合、膀胱癌、前立腺癌などの悪性疾患、間質性膀胱炎を除外するための検査を行います。
※臨床経験上、検査にて確定診断を行うのは困難な場合が多く、症状症候群としてとらえることが多い疾患です。
治療
多様な症状に合わせて治療を行います。
- 植物製剤
セルニルトン、エビプロスタットなどが使用される。前立腺の炎症を抑える働きが確認されている。 - α₁遮断薬
前立腺肥大症と併発することもあり使用することがある。 - 漢方薬
八味地黄丸、竜胆瀉肝湯などが使用される。
長期にわたる不快な症状のため、精神的ケアーも必要になる場合もあります。